昨日は、価値を磨き上げる本質が「足し算」と「引き算」にある、というお話をしました。磨き込んだ価値は、鋭い矢のように相手の心に届きます。その矢を放つ前に、もう一つ、決定的に重要なプロセスが残っています。それが「相手視点」への完全な切り替えです。
私たちは、自分の伝えたいことが明確になると、ついつい、伝えたいことを自分の表現で相手に伝えてしまいがちです。事前に考えるべきは「相手は、今どんな状態で、何を求めているのか」ことです。それらを踏まえて、「どう伝えるか」を検討する必要があります。
「伝える」は、自分を主語にした行為です。「私は、言った」「私は、書いた」という自己満足で完結してしまいます。「伝わる」は、相手を主語にした状態です。「相手が、理解した」「相手の、心が動いた」という結果が伴って初めて成立します。
編集思考における「みがく」の最終段階は、この「伝える」から「伝わる」への翻訳作業でもあります。自分が情熱を込めて磨き上げた価値(強み)も、相手が受け取れる形でなければ、ただの独りよがりなノイズになってしまいます。
それは、「たった一人の読者(ペルソナ)を具体的に設定し、その人に向けて手紙を書くように語りかけること」です。
「30代の女性」といった曖昧なターゲット設定では不十分です。もっと解像度を上げます。この解像度を高めるために相手の欲求を予測するという手法があります。今回は、その基礎的な内容をご紹介します。
解像度を上げるために次のように深掘りしていきます。
ここまで具体的に一人の人物像を描くと、その人がどんな言葉なら耳を傾け、どんな表現なら心を動かされ、どんなタイミングなら情報を受け取ってくれるかが、見えてきます。
必要なコンテンツの内容は、専門用語だらけの堅苦しい文章ではなく、共感と具体例に満ちた、温かい語りかけになるはずです。
私が長年、編集者として大切にしてきた言葉に「神は細部に宿る」というものがあります。それをもじったわけではないのですが、情報発信においては「鍵は読者に在る」と考えています。
「あなたの強みが市場で価値を持つか」を決めるのは、あなたではありません。市場であり相手です。相手の心が動いて初めて、あなたの言葉は価値を持ちます。
その決定権を、相手が100%握っている。ここの起点にして、強みを発信していくことが、独りよがりの発信から卒業するための第一歩です。
あなたのメッセージを届けたい「たった一人」は、誰ですか?
その人の顔を思い浮かべながら、今日の文章をもう一度、その人への手紙として書き直してみてください。
明日は、その人に向けて、あなたの強みを「言葉」にする技術についてお話しします。

